Monthly Relay Interview 福島と。
三瓶

#3 三瓶

1976年11月23日生まれ。
福島県安達郡本宮町(現本宮市)出身。
調理師専門学校への進学を機に上京。
その後、22歳の時にNSC東京校5期生として養成所に入所し、芸人の道へ。「三瓶です。」の自己紹介ギャグを始め、「三瓶のちょっと面白い話」など、独特のムードとマイペースなキャラクターでお茶の間に人気を博す。

東京に出てきたからこそ感じる、
故郷に残る景色や文化の貴重さ

三瓶

—高校卒業までお過ごしになられた故郷・福島での印象的な思い出や心に残っているエピソードはありますか?

福島の名物っていうわけではないんですが、近所にソースカツ丼の有名なお店があったんですよ。そこはちょっと贅沢するときに行くようなお店で、幼な心にワクワクしていた記憶がありますね。小学校3年生から少年野球を始めて、公民館のグラウンドで毎週練習やら試合やらをやるんですが、いい成績を残すと、チームみんなで連れて行ってもらえたんです。“特別な味”というんでしょうか、ものすごく嬉しくて、美味しい思い出でした!

—幼い頃に打ち込んだ野球の思い出が詰まった味ですね!

そうです! あと、これはこの世界に入ってから知ったのですが、会津方面の山間部に江戸のあぜ道や茅葺き屋根の家屋が残っている大内宿という宿場町があって、そこの名物そばがすごく美味しい! 「ねぎそば」って言って、お箸の代わりに長いネギが付いていて、それで食べるんですよ。薬味が欲しくなったタイミングで、かじって…。雰囲気もすごく良いし、おそばは美味しいし、県でも住んでいるエリアが違うと全然知らないものだなあと思いつつ、福島っていいところだなあと改めて感じましたね。

三瓶

—お笑いのお仕事をされていたら、地方ロケも結構ありますもんね。

そうなんです。まさに番組のロケで初めて知ったんですよ。やっぱり、ロケ先が福島だったり、東北だったりすると、気持ちが全然違いますね。もちろん、緊張感は持っていないといけないんですが、つい落ち着いちゃうというか…。いつもよりもリラックスした気持ちでいます。

—そういう時は、ご実家や思い出の地に立ち寄ったりも?

翌日が休みだと実家に泊まるようにしています。郡山に住んでいる姉が日を合わせ帰ってきてくれて、家族みんなでご飯を食べたり…。上京したての頃は、地元の友達に連絡して集まったりしていたんですが、だいぶみんなおじさんになって、家庭を持っていたりもするので、今は実家の茶の間でのんびりというのが定番ですね。食卓に座ると思い出すのが「いかにんじん」。細切りにしたいかと人参をみりんと醤油で煮た料理なんですが、よく並んでいました。

三瓶

—まさに、母の味ですね。ご実家の周りの思い出スポットや絶景スポットはありますか?

実家の前が坂でその坂を下るとき、向こうに安達太良山と名倉山が見えるんですよ。小中高と毎日見ていた通学路の景色なので、その頃はなんとも思わなかったんですが、今改めて見ると、きれいだなあって思いますね。あと阿武隈川。この川を越えないと駅に行けなかったので、いつも見ていました。その日の水の量で昨晩の天気を感じたり、祭りでは灯籠流しが行われたり…。田舎特有の習慣や文化がありました。

—三瓶さんが今のようなお笑い芸人を志すようになられたのは、東京に出てきてからだとか?

そうなんです。元々は、東京に出てきたのは調理師の専門学校に行くためだったんです。当時はあまり何も考えてなくて、受験勉強がいやだから専門学校に行こうということくらいしか考えていなくて…(笑)。それで友達と同じ学校に進みました。お笑いの養成所に通うようになったのは、専門学校を卒業して2,3年経った頃でした。

三瓶

—何かきっかけがあったんでしょうか?

卒業して飲食業のバイトをしていたのですが、父にも「いずれは福島に帰ってこい、それまでは自分の好きなことをしろ」と言われていたので、「せっかく出てきたなら、他に好きなことを1年やってみよう」という気持ちで入りました。両親には養成所のことも知らせてなくて。TVに出た時に近所のおじさんが見つけて、母に「あれ、お宅の息子じゃない?」って…。

—ご家族には、驚きの発覚の仕方ですね!

驚いたでしょうね! 当時はまだ、東北からお笑い芸人を目指して上京するなんてこともそんなによくあることじゃなかったし、僕の場合はあくまで専門学校に行くために上京してたので、親には言えなかったんですよね。でも、今は仕事で地元からお声かけ頂く機会もあったりして、とても嬉しく思っています。

三瓶

—凱旋帰省ですね!

昔に比べると、福島出身のお笑い芸人も増えてきて…。とはいえ、そんなに多くはないからすぐに仲良くなるんですよね(笑)。この間も、仕事で一緒になったお笑いトリオのメンバー全員が自分と同じ高校出身なんてこともあって、地元話に花が咲きました。高校くらいからは、とりあえず都会へ!っていう気持ちで郡山まで足を伸ばしたりもよくしましたが、今は実家近くに残っている田舎の自然や風景の貴重さに気付くようになりました。故郷の美しさ、良さを感じる瞬間の一つですね。東京に出て、離れたからこそ、余計に思うのかもしれません。

写真/小長井ゆう子
取材・文/杉田美粋

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